三大栄養素と五大栄養素~フィトケミカルと機能性成分

  

食品の栄養

五大栄養素

炭水化物(糖質)

脂質(脂肪)

たんぱく質

ビタミン

ミネラル

1日に必要なエネルギー摂取量



機能的な成分

機能性成分

食物繊維

食材の栄養

野菜の栄養

海苔の栄養

三大栄養素

栄養といえば、「カラダを大きくするもの」「カラダを元気にするもの」という考え方が主流の時代がありました(今でもかなり多くの人が漠然とそう思っているようですが)。いわゆる「カロリー=栄養」という概念です。

現在は、「カラダが正常に機能するために不可欠のもの」も栄養素だと考えられていて、飢餓よりも飽食で困っている現状から、むしろこちら方が大事ではないかと考える専門家が激増しています。

分かりやすい一例を挙げますと、炭水化物というのは糖質に食物繊維を加えた呼び方ですけども、食物繊維というのは吸収もされないし、エネルギーにもならないモノなので、昔は栄養素の範疇だと考える学者はいませんでした。つまり「炭水化物=糖分のみ」だとされていたのです。ひっついている食物繊維は「役に立たたない余計なモノ」という認識です。

ところが時代は変わり、今は「食物繊維が少ないから現代病を招いている」というのが常識になり、食物繊維も立派な栄養素の仲間入りです。(栄養素をエネルギー源だと考える方面は食物繊維を栄養素だと認めていませんが、「栄養とは何か」に対する解釈の問題でしょうし、これから変わっていかざるをえないでしょう)

そのような意味(現代は飽食気味)で、現在は三大栄養素よりも、「微量な調整栄養素」が注目を浴びる時代です。ビタミンやミネラル、食物繊維、各種の酵素、発酵による菌、フィトケミカル(植物由来の機能性成分)、こうした微量ですが大事な作用をしている成分の重要さが分かってきています。これらを含めて五大+第六、第七の栄養素と称することもあります。

三大栄養素がクルマのガソリンだとしたら、その他の微量栄養素はオイルや電気系統システムに相当すると言えましょう。糖質、脂質、蛋白質がなければ動くエネルギーが得られないし、それ以前に生きられません。

しかし、現代のクルマは電気系統がないとウンともスンともいわないし、オイルがなければ劣化して壊れます。 基本的な栄養が不足する心配がなくなった現代人も似たようなものです。

そして今は、ガソリンではない電気・水素など新たなエネルギー源を模索する方向に向かおうとしているクルマ。ヒトもまた、古典的三大栄養素から「さらに機能的な新栄養」に向かっているのかも知れません。

炭水化物(糖質)carbohydrates

炭水化物とは、文字通り「炭素」と「水」からできている有機化合物です。炭素の原子に水の分子。食品としては米、パン、そば、砂糖などの総称です。

ヒトは運動も何もしなくても基礎代謝と筋肉維持活動のために1日に電球1個分のエネルギー(電力換算)が必要で、おおよそ1300~1800kcalを消費します。

これに対して、食事として補給するエネルギー摂取量はだいたい2000kcal(日本人平均)
そのうち60%が炭水化物(糖質)で、脂質は25%、タンパク質が15%。

糖質の摂取量は、総エネルギーの50%以上が望ましいと奨励されていますので、日本人はクリアしているわけです。(あくまでも平均値ですが)

食品100gから、100g中の水分・たんぱく質・脂質・灰分の合計(g)を差し引いた値が炭水化物の量で、1gあたり4kcalのエネルギーがあります。

ヒトが炭水化物を必要とするのは、エネルギー源として重要だからであり、さらに、遺伝子(DNA、RNA)などをつくる材料として不可欠だからです。

食べた炭水化物は、唾液やすい臓のアミラーゼなどの消化酵素によってぶどう糖(グルコース)などの単糖類に分解され、小腸から吸収されます。

ぶどう糖は直接的なエネルギー源であり、車にとってのガソリンに近いもの。大量のエネルギーを必要とする脳や筋肉 、赤血球を中心に消費され、パワーに直結します。

疲労を回復したいなどの理由がある場合は、直接小腸に糖分だけを吸収させればよいわけで、アメをなめる、極端なケースではブドウ糖の点滴、などの方法がとられます。
遭難して栄養失調になった人を元気にするには、タンパク質ではなくまず糖分を与える方がよいということです。ステーキよりパン、パンよりもチョコやアメ玉。

しかし、体を動かしたり脳をフル回転させるたびに、いちいち糖質を補給してやる(車でいえば燃料を直接点火させているようなもの)わけにもいきません。

そこでカラダはガソリンタンクのようなシステムを用意して、この問題に対応するようになっています。 使われなかったぶどう糖を、合成酵素たちが「グリコーゲン」という構造に変換して、肝臓や筋肉に貯蔵しておくのです。

このグリコーゲンが、タンクに入ったガソリンのように、必要に応じてまたグルコースに分解され、カラダ中にある細胞のエネルギーになるわけですね。

炭水化物
  ↓(分解)
グルコース→エネルギー
  ↓(貯蔵)
グリコーゲン
  ↓(補給)
グルコース→エネルギー

炭水化物の主体は糖分ですので、「糖質」あるいは「糖」と呼ばれるわけですが、糖分にも様々な種類があります。

糖のもっとも基本的で単純な形をしているものが【単糖】で、ぶどう糖もこれになります。
単糖が二個つながったものが【二糖類】
ショ糖や麦芽糖が二糖類になり、砂糖はショ糖ですから二糖類ということになります。
単糖が数個~数十個つながって【オリゴ糖
単糖が数百個~数千個つながったものが【多糖類】

単糖 グルコース(ぶどう糖)、フルクトース(果糖)、ガラクトース(脳糖)、マンノース、ほか
二糖類 スクロース(しょ糖)、マルトース(麦芽糖)、ラクトース(乳糖)、セロビオース、トレハロース、ほか
オリゴ糖 フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、乳果オリゴ糖 (ラクトスクロール)、ニゲロオリゴ糖 、キシロオリゴ糖 、ほか
多糖類 スターチ(でんぷん)、グリコーゲン、セルロース、ペクチン、アガロース、ほか

単糖、二糖が【糖類】
吸収されやすいのが特徴
糖類に多糖類を含めて【糖質】
結合が多いため分解が遅くゆっくり吸収される
糖質に食物繊維全体を含めて【炭水化物】
このような分類をする場合もあります。

食物繊維

さて、上の多糖類のなかにセルロースというものが出てきましたけども、これは他の糖と少しだけつながり方が異なっていて、ヒトの体内にまったく存在しません。

存在しないということは吸収もしていないわけで、したがってこれを分解する酵素も人体にはありません。これを食べても、カラダの成分にも「エネルギー栄養」にもならない。そう考えられていました。

ところが、カラダはこれを「有効利用」していました。
僅かではありますがエネルギーに変換。腸内の細菌が分解してエネルギーを産生していたのです。

そして大腸の健全な機能になくてはならない大事なものだということも分かりました。「いらないもの」どころか、これがなくては大腸がまともに機能しなくなり、結果として不調を招いてしまう。

便秘予防、毒性物質の排除(デトックス)、大腸癌予防はもちろんですが、肥満予防、糖尿病予防、動脈硬化の予防、免疫強化。

腸内でビフィズス菌等の有用菌を増加させ、ウエルシュ菌等の悪玉菌を抑制する、ビタミンB群も増やす、エネルギー吸収はゆるやかで体に負荷をかけない、血糖値の急激な上昇も抑制、こうした働きをするものが栄養素ではないという考え方は、無理があると言えましょう。

こうした、セルロースなどの多糖類を始めとした消化酵素によって消化されない食品成分を、【食物繊維】といいます。

食物繊維には水溶性と不溶性があり、ほとんどは植物や海藻に含まれていて、 なかにはキチン、キトサンのように甲殻類の殻などに含まれるものもあります。

食物繊維の種類と簡単な説明

糖質の過剰がもたらすもの

食べた炭水化物は、ブドウ糖として消費され、使い切れずあまった分はグリコーゲンとして貯蔵に回されます。

しかし、余剰分がぜんぶグリコーゲンになるわけではありません。糖質は体内に少量しか貯めておけないのです。

グリコーゲンの貯蔵量は、せいぜい筋肉に500g、肝臓に100gというところです。使い切れなかったぶんの多くも、外に排出はされません。

炭水化物の多くは脂肪酸に変換されて(つまり脂肪になって)、内臓や皮下にたまっていくのです。 摂りすぎた糖質は、肝臓が脂質に変えて脂肪細胞へ送ってしまうんですね。これが肥満の一因です。

その反対に、「脳のエネルギーはブドウ糖だけなので、摂取しないと大変なことになる」という話をよく聞きますけども、もし体内の糖質が不足したら、肝臓が脂質とタンパク質(アミノ酸)から糖を合成するのです。脳細胞と赤血球は糖質を優先して要求しますから、グリコーゲンが足りないとそういうことをします。

この事からも「砂糖は脳に良い」という論調は馬鹿げており、そもそもブドウ糖補給に砂糖を摂る理由はありません。

カラダは常に血液中のぶどう糖レベルを一定に保つようにはたらきます。これは、糖が足りなくても過剰でも余計な負荷をかけてしまうということです。

健康な人の血液中では、ぶどう糖レベル(血糖値)がいつも一定(70~110mg/dl)に保たれています。

血糖値が下がり過ぎると、冷や汗が出て脱力感を感じ、最後は失神することになります。

逆に高すぎた場合、最終的にあちこちの血管が破裂してしまうでしょう。死に直結してしまうのです。

そうならないために、すい臓から血糖値をコントロールするホルモンが分泌されます。これが「インスリン」ですね。

急速に吸収される種類の糖質をたくさん体内に入れてしまうと、当然ぶどう糖レベル(血糖値)も急上昇します。

こうなるとインスリンは過重労働になり機能がおかしくなって、最後は分泌されなくなります。こうなれば「糖尿病」ですね。180mg/dlを越えたあたりから腎臓がおかしくなりブドウ糖がそのまま尿で排出されるようになってしまいます。

この大きな原因は「炭水化物のドカ食い」と「ショ糖のとりすぎ」です。
炭水化物はご飯、パン、パスタ、ラーメン、ソバ、ウドンと、日本人が毎日食べるものですから、意識しなくてもやや過剰になっておりますし、ショ糖の場合は飲み物が大きいでしょう。コーヒーや清涼飲料水などに含まれるものを乾燥重量に換算すると驚くほど多いのが分かります。

高血糖・糖尿病

炭水化物を摂る大切なポイントは、「急」と「過剰」に気をつけて、カラダの恒常性(ホメオスタシス)を乱さないようにすることです。


食品の糖質とカロリー(一覧表)